近年ではさまざまな生成AIが登場していますが、そのなかでも注目を集めているものが「大規模言語モデル(LLM)」を活用したものです。以前からコンピューターと対話する形のAIは存在していましたが、大規模言語モデルの登場により、その精度は格段に向上しました。従来の言語モデルと比べて大規模言語モデルはどのような特徴を持つのでしょうか。
目次
大規模言語モデル(LLM)とは
大規模言語モデル(LLM:Large language Models)とは、大量のデータとディープラーニング(深層学習)技術によって構築された言語モデルです。言語モデルは文章や単語の出現確率を用いてモデル化したものであり、文章作成などの自然言語処理で用いられています。大規模言語モデルと従来の言語モデルでは、「データ量」「計算量」「パラメータ量」が大きく異なります。
- データ量:入力される情報量
- 計算量:コンピューターが処理する計算量
- パラメータ量:確率計算を行うための係数量
大規模言語モデルでは上記の3点が大幅に増加したことで、精度が格段に向上しました。大規模言語モデルは、2017年に発表された「Transformer」がきっかけとなって構築されたといわれています。Transformerの登場によるブレイクスルーと、マシンパワーの向上によって、より多くのデータをモデルに学習させられるようになったことで大規模言語モデルは誕生しました。
大規模言語モデル(LLM)の仕組み
1. トークン化 (Tokenization): 入力文を最小単位に分ける
まず、大規模言語モデルにテキストを入力する際、そのテキストは「トークン」という最小単位に分割されます。
- トークンとは?
- トークンは単語、部分単語、文字、または記号などの単位です。
- 例: 「今日は天気が良いですね。」 → [“今日は”, “天気”, “が”, “良い”, “です”, “ね”, “。”]
- トークン化の役割
- モデルがテキストを数値データとして扱えるように変換するための前処理です。
- バイトペアエンコーディング (Byte Pair Encoding, BPE)
- 一般的なトークン化手法の1つで、頻出の文字列を結合して効率的にトークンを生成します。
- 例: “playing” → [“play”, “ing”] のように部分単語に分割。
2. 文脈理解: トークン間の関係を計算する
テキストの文脈を理解するために、モデルはトークン間の関係性(依存関係や意味的なつながり)を学習します。ここで重要なのが 「自己注意機構 (Self-Attention Mechanism)」 です。
- 自己注意機構とは?
- 各トークンが他のすべてのトークンとどのように関連しているかを計算します。
- 例: 「私はリンゴが好きです」では、「リンゴ」と「好き」が強い関連性を持ちます。
- 文脈を考慮する仕組み
- 各トークンの重要度をスコア化し、文全体の意味を考慮した処理を行います。
- この計算は 「注意行列 (Attention Matrix)」 を用いて行われます。
3. エンコード (Encoding): 特徴量を抽出する
エンコーダーは、トークンごとに意味的な特徴を抽出します。
- 埋め込み (Embedding)
- トークンは数値ベクトルに変換され、各ベクトルがそのトークンの意味を表します。
- 例: “apple” → [0.2, -0.5, 0.8, …]
- 特徴抽出
- エンコーダー(Transformerモデルの一部)はトークンの意味や文脈情報をさらに高次元の特徴として表現します。
- 複数のエンコーダーレイヤーを重ねることで、より複雑な意味や関係性を捉えます。
4. デコード (Decoding): 次のトークンを予測する
デコーダーはエンコーダーで得られた特徴量をもとに、新しいトークンを生成します。
- 次のトークン予測
- モデルは、入力されたトークン列に続くトークンの出現確率を計算します。
- 例: 「私はリンゴ」 → 次のトークン「が」が最も高い確率で選ばれる。
- 確率分布
- 全てのトークン候補の確率が計算され、最も高い確率のトークンが選ばれます。
- 例: 「リンゴ」→ [“が”: 70%, “を”: 20%, “に”: 10%]
5. 次のトークンの確率を出力する
モデルは各トークンの出現確率を計算し、最も適切なトークンを順次生成します。
- テキスト生成の流れ
- 最初の入力トークンを基に次のトークンを予測。
- 予測したトークンを加えて再度予測を行う。
- このプロセスを繰り返し、文章全体を生成。
- 例
- 入力: 「私は」
- 生成: 「リンゴが好きです」
6. Transformer の仕組みを利用
Transformerは、大規模言語モデルの基盤となる構造です。以下がその特徴です:
- 自己注意機構 :
- 全トークン間の関連性を同時に考慮。
- 並列処理の効率性:
- 従来のRNNやLSTMのような逐次処理ではなく、並列処理で学習が高速。
- エンコーダー・デコーダー構造:
- 入力を理解(エンコード)し、それを元に出力を生成(デコード)。
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